何故かマルタへ島流し 

男大学院生が七ヶ月マルタに引きこもる話 一応留学

マルタダイエットと何故清潔感が失われるのか

マルタに来てからみるみる痩せていく。

肌が焼けたことも見た目の面ではある程度関係あるのだろうけれど、それでは説明できないくらい痩せた。腹筋がもうすぐ全部見えそう。

何故かといえば、食べない。

 

俺は日本では絶対1日3食食べていた。食い意地もはっているし、美味しい店を探しまくっては関西圏の店を巡りつづけていた。

しかし、ここマルタではそんな気にはならない。

それは色々な理由がある。

 

多少余裕があるとはいっても、この先絶対に増えることのない残金を考えれば、出来る限り金は使いたくない。

外食は安いといってもそれなりにするし、毎日ファストフードを食べるのも気が進まない。

 

じゃあ自炊すればいいじゃない。と聞かないで欲しい。

もちろんしている。しかし面倒なのだ。

毎回一人分だけの調理に性能の悪いコンロ。スペースのないシンク。開いている時間の限られているスーパー。

だが、この程度なら全然構わない。ゆっくりのんびり料理をすればいい。

一番嫌なのは洗い物だ。

 

汚れたら汚れっぱなしの机、何かを煮たまま放置された鍋、積み重なる洗っていない皿、ソースがベッタリくっついたままのフォーク。

 

日本では実家暮らしで、食洗機の力に頼りっぱなしだった俺だが、基本的に調理しながら器具は合間に洗っているし、食べ終わったら全部綺麗にしている。

つまり、俺が調理前にするのは同じアパートに住んでいる男共の洗い物だ。ふざけんな。

俺は母親じゃねえ。ちゃんと洗えやクソ野郎。

 

自分は毎回きちんと洗い物をしているのに、飯を作ろうとしたらまず他人の洗い物をしないといけない。この気持ちがわかるだろうか。ぐんぐん俺の調理意欲を奪っていく。

 

 

 

しかし、俺も馬鹿ではない。解明したのだ。何故あんなに清潔感がなくなるのか。

 

というのも、俺が来てまめに洗うようになって以来、そこそこ綺麗な状況が保つタイミングも存在したのだ。ただ、俺が2日ほど台所を使わないタイミングが2回ほどあり、その後にキッチンはひどいことになる。

 

最初俺は特定の人間が洗わないので、そいつらが俺の洗わぬ間に溜めているのだと思っていた。

 

しかし、どうもそういうわけではないらしい。皆、洗う時は洗うのだ。

洗い物がたまるタイミング、それは飲み会後と朝だ。

 

アパートメントの一部の住人達はトルコサッカーをPCで観ながら、酒を飲みつまみを食べる。

彼等のうち誰か一人が何か調理をする。仲間たちは盛り上がっている。シュートを決めたのか、キーパーがミラクルセーブを決めたのかはわからない。自分も早く観たい。盛り上がりたい。

そんな時に洗い物までしていられるだろうか。否である。死ね。

さて試合も終わり、酒も入った。勝ったかもしれないし負けたかもしれない。ただ、ゲームを観たあとの興奮が微かに残り、皆で楽しく観た満足感がある。そんな時に誰か一人が「俺は洗い物しとくよ」とはならない。そのまま酔っ払うまで飲むか、部屋に戻ってぐっすり眠る。滅べ。

 

ECの午前授業は9時から始まる。遅刻せずに出るなら8時45分にはアパートを出たい。

しかし、どこの国でも自発的に早目に起きて朝一の授業に出る人間というのは非常に稀で、朝7時に起きているのは大抵俺だけだ。

彼等は非常に短い時間で飯を食い、シャワーを浴び、着換え、香水を振り、出かけていく。当然洗い物をする時間なぞない。ついでにビショビショのシャワールームとトイレも残される。もー本当になんなの。嫌い。

 

そして、汚されたキッチンの後が問題だ。

俺が綺麗にした後誰かが使うと、その人は大抵キッチンをある程度清潔に保つ。洗剤が落ちきってないとか、まあ色々あるけど。

しかし、誰かが洗い物を残した後、彼等は突然、洗い物をしなくなる。時間があろうとなかろうと。

綺麗な状態の何かを汚すのには抵抗があるけれど、少しでも汚れてしまえばもうそれは問題ないらしい。

 

こうして、日々他人の洗い物は溜まり、俺の調理意欲は消え失せ、飯の回数が減り、痩せていく。嗚呼哀しきは男子寮ダイエット。